[雑感069] 大学入試の民間試験利用問題で論じるべきこと(その2)
前記事から時間的には少し空いているが、関連するつぶやきのまとめ的な投稿。
下記2つのツイートをRTした上で、公平性以前の問題として、どう見ても50万人の受験者をさばけるだけの実施体制が全然整っていないということを指摘した*。
これだけ多方面から無理だと言われているのに強行して、不安を払拭どころか不安が的中してトラブル多発した場合、どう責任を取るんだろうか。大臣辞任?それは甘過ぎるなあ。記者会見で誰もそこを問わないのだろうか。 https://t.co/sHDTdflbST
— 三浦淳一 (@N_yobiko) 2019年9月17日
「努力します」
文科省の職員にそんな精神論を言われても到底納得できない。
公平性が最も問われる入試になぜ、その公平性を担保できない制度設計をするのか。複数の大学も導入拒否を公言し、多くの見直しを求める声を無視して何が文部科学省なのか。 https://t.co/rVdpM8U0Yy— 蓮舫・立憲民主党(りっけん) (@renho_sha) September 19, 2019
具体的に考えると、静岡県全体でだいたい16000人ぐらいの受験者がいるはずだが、GTEC-CBTの実施会場は今のところ浜松のみ。予定されている4回で単純計算でも4000人。受験期間の3スロット中2回を選ぶのは受験者なわけで(全員が2回GTECを選ぶわけではもちろんないとしても)、最後のC期間に受験者が集中するのは自明である。8000〜10000人ぐらいが申し込んだ時、場所や端末や試験監督はどうするの?エコパでも借りてるの?**
英検は186エリアに260のテストセンターを配置と謳っているが、今現在の静岡県での体制で言えば5箇所。2回の受験機会の第2回に集中するのは自明。16000人なら3200人。GTECと半分ずつ分け合ったって1600人。テストセンターのイメージ写真は3、40台端末あるかな?という感じだが、これが各会場に4、50部屋あるのだろうか?ビル何棟借りてるんだよという話で、そんな潤沢な施設環境が整っているようにはとても思えない(リプライで福岡市では現在3箇所のテストセンターで定員82名という情報を伺った)。てなことを47都道府県で総点検したら、全然無理なことは誰しもに明らかなのではないか。
本来、全員受験可能な体制が整っていて初めて、静岡の場合、GTECは伊豆の生徒も浜松まで行かなきゃならんのですか、逆に神奈川に出た方が近いからそっちになるんですか、諦めて三島で英検受けろってことですか、名古屋や浜松の生徒が3回も4回も比較的選び放題で受けている間にですか、みたいな公平性の議論になるわけで、全然それ以前なのに、なぜ一部の大人たちはこのまま進めてしまえると思えるのか不思議でならない。
全般であれこれ言っても「がんばるがんばる」一点張りなので、各都道府県のこういう状況を洗い出して「全然万全の体制じゃない具体的リスト」突きつけるべきだと思うが、3、4つの県がこういう状況で能書き垂れるだけでも激烈に怒られる話なのに、全国で何一つ整ってないの本当に総玉砕体制で怖過ぎる。
考えられる(悪い)シナリオは以下のようなものだ。(1)まともに実施されず、すったもんだのあげく英語に関する情報はその年の入試に利用できなくなる。(2) なし崩し的に(公平性の条件を満たさない)学校や適当な施設での受験が認められるようになり、グズグズな入試がまかり通る(試験監督負担が学校に押し付けられたりもする)、(3) 試験団体が見かけ上のトータルの収容人数だけ満たして居直った結果、居住地域の受験機会を逃したものは他県にでも受験に行け、というえげつない機会不平等と地域格差がまかり通る。
なんども言うが、どのパターンになっても英語教育は死ぬ。英語はますます(分断を強める形で)日本社会に浸透していくかもしれないが、英語教育は死ぬ。王蟲の怒りで大地が震えてからじゃ遅いんだぞ(そして現実はアニメではないのでナウシカの登場を期待しても駄目)。。。
* GTECが出しているデータは去年までの3技能の受験人数で、Speakingはそれほどの人数受けた実績があるわけでもない(アセスメント版ですらタブレットを生徒数分用意できていない実態がある)。英検の1 day S-CBTはまだ何の実績も公表されていない。
** 文科省はニーズ調査の結果を公表していて、これによれば最大はA期間の6月の408,248人だが、C期間の10月223,354人と11〜12月190,148人を足せば結局それを超える。そもそも19〜22万人を捌けるのかすら怪しい。