[レビュー020]『エイゴラボ』
いわゆる副教材なので通常のレビューとは違うけれども、お世話になっている先生から
- 正進社編集部(編)『エイゴラボ』正進社.
の見本版をいただいた。
既に詳しい紹介記事がこちら
にあり、部外者が屋上屋を重ねることもないのだが、通して見ると「使ってみる」の部分は本当によくできていると感じる。こういう教材やテストを日常的に作ったり活用したりできるといいなあと思うので、大学の授業でも紹介したい。
個人的に最も印象的だったのは、コーナーの充実具合とデザインだ。
私がいただいたのはTOTAL ENGLISH準拠版だが、構成は
- (前の学年の学習内容の復習として)基本文まるっとレビュー
- (教科書の各パートに対して)くらべて理解する→練習する→使ってみる
- (各レッスンのまとめとして)基礎力を鍛えよう: 答え方をきわめる→まちがいセンサーをみがく→古い記憶もキープする
- (各レッスンのまとめとして)力だめしをしよう
- (語彙・文法のまとめとして)Word Tree、骨組みラボ
- (Appendixとして)World Watch、(その学年の)基本文まるっとレビュー、3年間で使えるようになる表現
という具合。授業での実用性と生徒に飽きさせないことをよく考えているなあと思う。World Watchなどは洗練されたデザインの読み物として面白いし、「力だめしをしよう」の読解問題の文章も、例えばロンブ・カトーさんのことが紹介されていたり地域によるお雑煮の違いについての対話とデータだったり、普通に読ませる、生徒に読んでほしいと思える内容だ。
デザインについてはこちらでも詳しく紹介されているが、ついに学校教材もここまで来たかという感じで、本当にセンスが良い*。それは装丁やイラストのみならず、フォントや色遣い、行間の取り方等にも表れている。つまり、単にカッコいいだけではなくて、見やすさや使いやすさに直結したデザインの良さなのだ。「大きめに書かせてくれるのは1年生だけ!」というようなこともなく、3年間通して同じ、幅に余裕のある記入欄で書かせてくれる。拝見していて、私自身が中高の時に買わされた、やたらデカくて重たくてその割には記入欄が狭くて、しかもトゥルットゥルの紙質のせいでシャーペンでは書きにくかったり芯がすぐ折れたりして気が狂いそうになる副教材を思い出した(そういや大人にファンの多いEnglish grammar in useもそうじゃなかったっけ)。
もちろん中身に全く課題がないわけではない。「くらべて理解する」は、既出の構文との比較によって新出事項を理解しやすくしてくれているのだが、所により扱いに注意が必要だ。例えば2年生の比較構文のところでは、I’m tall.とI’m taller than you.、あるいはI’m short.とI’m the shortest of the three.といった文が並列されている。添えられたイラストには配慮が見られるものの、これは比較構文の表す相対的意味についてやや誤解を招きかねない。
他にも、3年の「今〜したところです。/もう〜しました」(現在完了)に対して、冒頭の解説で「過去形とのちがいは、過去のことを含みながらも気持ちの焦点が現在にある点です」(「現在」に傍点)という説明と図が与えられているが、これはあまりうまくない。過去完了について考えてみよう。現在完了が発話時点よりも前に生じた事態が発話時点に何らかの関わりを持っていることを示す文法的手段であるのと同様に、過去完了は発話時点から見て過去のある時点に、それよりさらに過去に生じた事態が何らかの関わりを持っていることを示す。見方によってはこの時も「気持ちの焦点」は過去にあるわけではなく、話者の気持ちはいつだって発話時点(≒現在)にあると言えてしまうのではないだろうか。現在完了に限っても、いわゆる経験用法などは「気持ちの焦点」が「現在にある」という説明は馴染みにくいだろう。尤もこれは副教材の問題である前に教科書本体の問題でもあるわけだが、そういう抽象的な説明をするよりも、
- I lost my train pass last week, but I found it at the lost‐and‐found office.
- I have lost my train pass, so I have to buy a train ticket today.
といった文脈のある対比で違いを示したほうがわかりやすいだろう(正確に言えば、単純過去時制は発話時点の状況との関わりをその発話において示さないというだけなので「失くしたまま」という事態が続いても矛盾するわけではないが、現在完了相のほうは「取り戻した」という状況とは相容れない)。
やらせっぱなしにするのが良くないのはあらゆる教材に言えることだが、出来が素晴らしいだけに、先生がたにはそういうところの目配りと補足をお願いしたい。
* 余談でこんなことを書くと関係各位に怒られそうだが、教育学や言語学、認知科学に比べると、外国語教育関係の本は装丁(デザイン・色遣い・紙質)がどうもダサい。洋書はそもそも絶望的というか「どうしてそんなデザインにしたん?」と思うこともしばしばだが、蔵書中の和書で装丁がいいなあと思ったものを挙げても
- ペーテル・ヤーデンフォシュ(井上 逸兵(訳))(2005).『ヒトはいかにして知恵者となったのか: 思考の進化論』研究社.
- 松井 智子 (2013).『子どものうそ、大人の皮肉: ことばのオモテとウラがわかるには』岩波書店.
- 野崎 歓 (2014).『翻訳教育』河出書房新社.
てな具合で、早くも外国語教育という感じがしなくなってしまった。そもそも英語教育界隈で装丁にこだわりを感じるのは、寺沢さんや江利川先生の著作ぐらいかもしれない。
- 若林 茂則(編) (2006).『第二言語習得研究入門: 生成文法からのアプローチ』新曜社.
は結構いいセンいってると思うが、新曜社やみすず書房、勁草書房はもともと分野によらず装丁のわりとオサレな本を出す出版社だ。
何が言いたいかというと、外国語教育関係の出版社も装丁がんばって♡ということ(中身モナーというブーメランがすぐ飛んできそうだけど)。
初めまして。
家の手伝いで中学生に英語を教えています。
今年度からエイゴラボを採用され、使っているのですが、教科書とリンクしておらず、困っています。(教科書sunshine)
個人的には、問題文や例題が雑で英語初心者の中学生にはハードルが高い教材だと思っています。
1年生のエイゴラボに
《疑問詞で解く》牛乳が好き?という問題があり 、その時点では、Are youかDo youしかわからない状態でこの問題文です。
もう少し問題に主語などが入っていればいいのに、どうしてこんな問題文ばかりなのでしょう?笑
生徒達の日頃の授業の様子を聞くと
教科書の会話文の内容は一切せず、
プロジェクターを見てスピーキング、
隣の人とスピーキング、
Newward書いて終わり。
後日教科書の会話文の和訳が渡されるという流れです。
また、先日1年生の自己紹介スピーキングテストで、まだ習っていないCan,When,Whereなどが質問されると聞き、慌てて教えました。
何人かの1年生からDoで答えたらCanで答えると先生が言っていたと聞き、今の中学英語はなにを教えているんだ!?となりました。
3年生は内申が関わるテストであって、
先生が教えていない単元があるのに、テスト範囲はP5~P53です。これは普通なのでしょうか?
今の中学英語は英会話を重点的にやっていると思いますが、こんな感じなのでしょうか?私自身完全ゆとり世代な者ですが、こんな雑な授業はされなかったです。(教科書sunshine)
もし、よろしければどのように教えるのがベストか教えていただけませんか?
返信お待ちしてます。