[本013] 独断と偏見による、これからの教育を考える20冊。
岩瀬直樹先生が同タイトルで(約)20冊を紹介されていて、シェアしたら「亘理さんのオススメ本も教えてください!」とコメントいただいたので応えてみる(2017年11月21日補足追記)。
英語教師になる人のためのブックリスト(私家版)に挙げているものやこれまで記事やツイートで紹介してきたものが複数並んだが、一応、岩瀬先生と同じ下記の条件で選んだ。
(1) わりと最近出た本
(2) わりと読みやすい本(できるだけ専門書をのぞく)
(3) 自著はのぞく
上記記事には2006年の本が挙げられているので、その辺までは(1)の条件を満たすと判断。2003年と2004年のものが入っているが、それ以外は2006年以降のもの。
研究室の本棚の前に立ったらいくつか入れ替わりそうな気もするものの、教育社会学的・行政学的視点で現状を見つめ歩きまわるところから入って、教育方法学的考察へ。そのためには知識(を得る意味)とは何か、学びとは何かを問い直したいし、教育に携わる者自身が学びを楽しんでいるかが問われると考えている。それ故、水野 (2014)や佐藤(2017)も私にとっては侮れない存在となる。最後の村上(2016)は、私自身がその授業(研究)への示唆をまだうまく言語化できる段階に至っていないが、岩瀬先生の言う「この本をベースに議論・対話したいなあ」というもの。
1. 広田 照幸 (2011).『教育論議の作法: 教育の日常を懐疑的に読み解く』時事通信出版局.
2. 苅谷 剛彦・増田 ユリヤ (2006).『欲ばり過ぎるニッポンの教育』講談社.
3. 久冨 善之 (2017).『日本の教師、その12章: 困難から希望への途を求めて』新日本出版.
4. 重松 清 (2004).『教育とはなんだ』筑摩書房.
5. デボラ・マイヤー(北田 佳子(訳))(2011).『学校を変える力: イースト・ハーレムの小さな挑戦』岩波書店.
6. 鈴木 大裕 (2016).『崩壊するアメリカの公教育: 日本への警告』岩波書店.
7. トニー・ワグナー(陳玉玲(訳))(2017).『未来の学校: テスト教育は限界か』玉川大学出版部.
8. 赤木 和重 (2017).『アメリカの教室に入ってみた: 貧困地区の公立学校から超インクルーシブ教育まで』ひとなる書房.
→[本010]『アメリカの教室に入ってみた』(赤木, 2017)
9. ピーター・M. センゲほか(リヒテルズ直子(訳))(2014).『学習する学校: 子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する』英治出版.
10. 岩瀬 直樹・中川 綾 (2015).『子どもが学ぶ、先生も学ぶ みんなのきょうしつ』学事出版.
→[本008]『子どもが学ぶ、先生も学ぶ みんなのきょうしつ』(岩瀬・中川, 2015)
11. 金子 奨 (2008).『学びをつむぐ: 「協働」が育む教室の絆』大月書店.
12. 子安 潤 (2013).『リスク社会の授業づくり』白澤社.
→[本][旧記事] 英語教育における『リスク社会の授業づくり』を考える
13. 板倉 聖宣 (2007).『子どもの学力 教師の学力』仮説社.
→板倉さんの著作で最初に、一冊だけ紹介するとすれば『たのしい授業の思想』になるかなと思うのだが、最近のもので一冊選んでおく(これからの教育(方法)学を考えるためなら『科学と教育: 教育学を科学にするための理論・組織』)。それ以外の著作への呼び水になればいい。
14. 水野 学 (2014).『センスは知識からはじまる』朝日新聞出版.
15. 山口 昌男 (2009).『学問の春:〈知と遊び〉の10講義』平凡社.
16. 佐藤 雅彦 (2017).『新しい分かり方』中央公論新社.
17. 佐伯 胖 (2003).『「学び」を問いつづけて: 授業改革の原点』小学館.
18. 佐藤 慎司・佐伯 胖 (2017). 『かかわることば: 参加し対話する教育・研究へのいざない』東京大学出版会.
19. 益田 ミリ (2014).『みちこさん英語をやりなおす: am・is・areでつまずいたあなたへ』ミシマ社.
→[本005]『みちこさん 英語をやりなおす: am・is・areでつまずいたあなたへ』
20. 村上 靖彦 (2016).『仙人と妄想デートする: 看護の現象学と自由の哲学』人文書院.
(補足追記)学ぶとはそういうことか!と感じて欲しくて、山口(2009)をまさに独断と偏見で入れているが、教育関連に絞るのであれば、次も読みやすく専門書とはちょっと違うので、ここに挙げるべきかもしれない。
21. アマンダ・リプリー(北 和丈(訳))(2014).『世界教育戦争』中央公論新社.
読みやすいかと言われれば…と省いたが、教育学者以外の教育に対する冷静な考察として挙げておきたいのが次の一冊。
22. 神野 直彦 (2007).『教育再生の条件: 経済学的考察』岩波書店.
同じ流れで『なぜ日本の公教育費は少ないのか: 教育の公的役割を問いなおす』辺りを挙げるのは憚られたが、教育の社会学的・制度論的考察として、そこまでマクロな考察ではなく、できるだけ身近な語り口の(でも質を損なっていない)ものとして次の一冊がある。
23. 吉川 徹・中村 高康 (2012).『学歴・競争・人生: 10代のいま知っておくべきこと』日本図書センター.
教育との関わりは間接的かもしれないが、10以降、特に14や16、18、19をあげるなら、並べておきたいのは次の一冊。子どもたちの周りには、どういう「おとな」が必要なのか。自分はどういう「おとな」でありたいのか。
24. 石井 桃子 (2014).『新しいおとな』河出書房新社.
専門書版と洋書版もいずれやりたい。