[雑感080][授業後017] たとえばこんな中等英語科教育法
ここのところの記事([雑感076]、[雑感077]、[雑感078]、[雑感079])で非対面授業、あるいはCOVID-19下での授業のあり方についていろいろ述べてきたので、お前の授業はどうなんだと思われるかもしれない。
ならば、と一例として自分の授業を公開してみる*1。
大学の先生は学生のことを考えず、テキトーな授業をして楽な御身分だという風評も散見することがあるので、こちとらガチでやっとんじゃということもあわせて伝われば幸い(すべての大学教員がこうだとか、ここまでやれということを求めているわけではない)。かといって自分の授業が特段すごいと自惚れているわけでもない。現時点の等身大の自分の授業というだけなので遠慮なくご批正ください。
ここでは、担当する中等英語科教育法Ⅰ(2年次以上、中高英語教員免許の必修科目)の初回を取り上げる。ちなみに第3回以降はZoomのスライド共有撮影に移行した。
【授業前】
1. [予備調査] 事前に大学内のLMS (Learning Management System)を通じて、履修者のIT環境についてアンケートを取り、LMSを通じた課題の受領・提出の他に、快適ではない場合もあるにせよ全員がYouTube等の動画は視聴可能である一方、リアルタイムの動画通信は環境的に難しい者もいることを確認した。使用するツールや授業の進め方はこの結果に応じて決めている。
2. [環境準備] 前年度までの学生の学習環境に関する調査結果などから、少なくとも最初の2回についてリアルタイム配信を用いないことは大学側も方針として示していたので、Slackで授業用のワークスペースを用意し、授業前に招待を送っている。
3. [課題] 授業の1週間前に、LMSを通じて以下の2文献を読んでくるよう依頼している。
- (a) 『わたしの外国語漂流記』(1, 4, 7, 8, 17, 21章) [参考記事]
- (b) 『未来をつくる言葉』第4章 [参考記事]
授業までに添付の2つの資料を読んできてください。(a)の文献については、6人をピックアップしてありますので、(面白いので全部読むことをオススメしますが)Taskとしては最低2つ以上を読んでみてください。
(b)の文献は途中の章ということもあってやや理解しにくいかもしれません、ざっと読み流すだけでも十分です。
特に何かを提出する必要はありません。授業の中で感想や読んで考えたことをSlackでDiscussionしてもらいますので、そのつもりでいてください。
4. [環境準備] Slackの#generalで事務的な連絡や(資料等のまとめ場所としての)授業用Webページ、slackの使い方について説明。
【授業】
1. [資料・動画提示] Slackに#001授業タイムライン、#002講義資料、#003課題の3つのチャンネルを用意し(#003に上記の課題も改めて投稿してある)、授業の少し前に#002に講義資料をアップして、授業開始時間に#001に次の挨拶動画のリンクを貼った。
- [PDF] 第1回講義資料
2. [活動1] 一定時間経過後に、任意でキャッチできたところから動画で私が何を話していたかをスレッドに投稿してもらった。これはSlackへの投稿の練習を兼ねている。2つ、3つで次に行こうと思っていたが、普通に(後から駆けつけたものも含めて)29件投稿があった。最初の10分。
3. [活動2] Now, it’s your turn.ということで、Flipgridを利用して、英語での自己紹介動画を撮影・投稿するよう依頼した。最近SNSでよく目にするリレー方式を採り入れて、グループのメンバーの名前を呼んでつなげていき、4人目が全員の名前とグループ名を宣言というのが条件。(事前にランダムにグループ分けして準備しておいた)鍵付きのグループごとのSlackチャンネルでやり取りしてもらった。共有したFlipgridのリンクとQRコードでうまくできない場合はチャンネルに直接動画を投稿するのもOKとした。ここは、Flipgridにしろ英語での自己紹介にしろ、とにかく「やってみる」ことが目的で、グループ・メンバー同士のラポール形成がねらい。25分ぐらいのつもりだったが、様子を見て30分後を締切り時間に設定し、(さらに5分のバッファを見て)35分後に次の動画に行くことを予告した。
4. [動画提示] 授業についてのGeneral Introductionの次の動画のリンクを#001に投稿した。
5. [活動3] 授業前の3.で依頼していた文献についてのディスカッション。文献の力に他ならないが、これが当初の想定を遥かに上回る盛り上がりを見せ、20分弱の間に、8グループで、私の合いの手的投稿やコメントを除いて264(平均33)ポストが交わされた。聖徳太子力53万の本気を出して、リアクションしたりコメントしたり。
6. [動画提示] 最後に、文献についての私のコメント動画リンクを#001に投稿した。
7. [振り返り] 感想や質問を入力するGoogle Formのリンクを共有した。コメント動画で触れた(が学生には配っていない)『未来をつくる言葉』第9章の一部を#002を通じて共有して授業終了(90分の時間内に収まった)。
【授業後】
1. [課題] 次回までに提出する課題として、今回の授業を踏まえ、生徒に向けた自己紹介・英語学習についてのメッセージ動画の作成を依頼した。1分以上最大3分まで。指示やリンクは#003に掲載。Flipgrid の活動は、無茶ぶりの本番タスクのようで、実は練習だったという構成。
結果を報告しておけば、履修者32名中31名が締切までに提出し、私からは全員にコメントを返却済みで、以降の授業で3本ずつ選び、コメントをつける活動を進めている。
2. [環境準備] 動画中の投影資料を含め、上記のアーカイブ、入力された感想を授業のWebページに掲載。
*1 昨年度以前から模擬授業動画の共有や学生からの要望に応えて担当授業はだいたい動画に撮っていて、私は自分の授業を公開することに抵抗はないのだが、これまでの授業は学生が映っていたため公開することはなかった。私しか映っていない動画をこうして自身の判断で公開できるのは、非対面授業の講義部分を事前撮影することになったことの副産物だ。