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[本070] 鳥飼・鈴木・綾部・榎本『よくわかる英語教育学』

[本070] 鳥飼・鈴木・綾部・榎本『よくわかる英語教育学』

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後期(勤務先の言い方では秋学期)から勤務先で英語科教育法の授業が始まる。最終的に、テキストは

を選んだ。

もとは私自身も一章を書いて、これまで静岡大学での授業などで使ってきた

をテキストに構想していて、『よくわかる英語教育学』は参考文献に挙げていたのだが、下記の内容上の特徴と、週2回の4単位モノという授業の性格から、こちらの方がテキストに適していると判断して入れ替えた。

先に授業の性格のことを説明しておくと、授業間の課題と授業内の活動や講義をつながったものとして、その配置とバランスを考えながら授業を構成する際、大学の授業は「来週までに」の時間感覚を基本としている(亘理, 2021)。少なくとも私は『「学ぶ」・「教える」の観点から考える 実践的英語科教育法』をそういう風に用いてきたので、内容をがっつり解説するにせよ、中のActivityに事前事後、あるいは授業中に取り組んでもらうにせよ、週2回のペースでは学生が準備したり咀嚼したりするための時間がタイトになってしまうように思われる。かといって、当該授業は後半の指導案検討・模擬授業に向かって行かねばならず、週2回が学生の中でつながるように授業を構成したい私としては、月曜はテキストを扱い、木曜は別の内容というわけにもいかない。そうすると、各項目が2ページで構成され、数項目で1パートが完結する『よくわかる英語教育学』のほうが適していると思われた。

もう一つ、(後に教員採用試験の勉強をしようと思った時に参考書に困らないように、という意図も含め)テキストとして指定はするものの、私は自身で配布・投影資料を作成して再編集するタイプで、授業中にテキストそれ自体をあまり参照しないということがある。予復習として読む箇所の指定はするし、読んだ方が理解が深まるのは間違いないが、読んでこなかったとしても授業には参加できるように作るので、「買ったのにあまり使わなかった」という感覚を持つ学生もいる。そうならばと、担当グループに授業をしてもらい、担当章について試験問題も作ってもらうという使い方を一昨年はしたが(去年は全面オンライン実施で、関係性を作るまでに時間も必要で、打ち合わせの時間や場所の確保が難しいことから断念)、『「学ぶ」・「教える」の観点から考える 実践的英語科教育法』の章のまとまりは週2回のペースには重たい。その点、『よくわかる英語教育学』であれば量的に学生もハンドルしやすく、授業の中で参照したり、切り出して検討したりしやすい。

内容としては、既存の英語科教育法テキスト、あるいは『「学ぶ」・「教える」の観点から考える 実践的英語科教育法』と比べ下記の点に特徴がある。

  • 増補版(CV)のことも含め、CEFRやその受容に関する記述が比較的厚い
  • 通訳翻訳や文学作品の活用、オンライン授業、AIと英語教育の関係といった側面にも触れられている
  • 日本の英語教育史、あるいは英語受容史に一定のページを割いている
  • 言語・認知・意味・文化・コミュニケーション・心理・教育・哲学・音声・テストといった関連諸領域の研究がそれとして取り上げられている
  • 参考文献が広範かつ豊富に挙げられている

「言語と権力、アイデンティティ」、あるいは「英語と社会・文化」といった側面については『「学ぶ」・「教える」の観点から考える 実践的英語科教育法』でも寺沢さんに取り上げてもらったところではあるが、『よくわかる英語教育学』でも著者らの専門性がよく発揮されているし、上記2点目はそういうメンバーが著者にいなければ他書ではなかなか取り上げようと思わないところだろう。3点目での「メディア英語講座と英語教育」という項目も鳥飼先生ならではである。同様に1点目も著者らの面目躍如という内容で、刊行年の新しさのアドバンテージも発揮されている。さらに、国際学部言語文化学科ということを考えると4点目も受講者がつながりを見出しやすく、ありがたい内容だ。

項目によっては解説の浅さと、その一方でのかなり専門的な参考文献との距離が気になるところもあるが、まさにそれを埋めるのが授業の役割ということで、テキストにふさわしいと判断された次第である。

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