レビュー
[本080] 中島・権・呉・榎井『公立学校の外国籍教員』
日本の学校教育の一環としての外国語教育に関わる者として
- 中島 智子・権 瞳・呉 永鎬・榎井 縁 (2021).『公立学校の外国籍教員: 教員の生(ライヴズ)、「法理」という壁』明石書店.
は、気にせずにはいられない。
ALTから高校英語教員となった京都のコンダイア・クリシュナ先生のライフストーリーだけでなく、「教育のグローバル化と外国籍教員」という章で英語能力を重視した特別選考についても(「英語を母語とする外国人を対象とする選考」を実施している4自治体と「『英語ネイティブ』を対象とする選考」を実施する6自治体について)詳しく述べられているので、英語教育関係者も必読だ。
外国籍教員の地位(あるいは外国人公務就任権)をめぐる歴史的経緯の理解も深まる。私自身、初めて知ることが多かった。上記の章には、ニューカマー児童生徒の教育支援のための「外国語堪能教員特別選考」や日本語指導員についてもまとめられている。前者はそう、岐阜・静岡・愛知・浜松の話だ。
教員不足や教員採用試験の見直しを議論している識者たちは、こうした問題にも目配せしてくれているだろうか。本書は、さいたま市が2019年度以降、日本国籍を有しない者を「任用の期限を附さない常勤講師」ではなく「教諭」として採用にすることにした背景に、元県立高校教員だった教育長の「英断」があったことも訪問調査によって明らかにしているが、そのような巡り合わせの「英断」に頼らなければ事が動かない現状の問題をよく考えたい。
「いずれも共通するのは、日本の教育の国際化、グローバル化のために必要であれば外国人に頼りながらも、その職や待遇の問題に正面から向き合おうとしないことである」(p. 197)。技能実習生の問題と同様、ご都合主義の搾取のツケが現在に、そして未来により重くのしかかるのだ。関係ない、知らないでは済まされないよ。
watari
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