レビュー
[本084] 稲垣ほか『ICT活用の理論と実践』
某書評原稿を書く際に対比したら面白いかもと思って目を通したが、結局対比する必要がなかった文献。
- 稲垣 忠・佐藤 和紀・堀田 龍也・宇治橋 祐之・高橋 純・瀬戸崎 典夫・森下 孟 (2021).『ICT活用の理論と実践: DX時代の教師をめざして』北大路書房.
流行りの言葉があちこちに太字で踊って、特に面白味は感じないんだ(へえTPACKにまで言及するんだとは思った)けど、今まで出会ってきた学生たちから「教育の方法と技術」の授業が面白いとか、教科教育法の授業と繋がってワクワクが止まらないといった声は残念ながら一度も聞いたことがないので、ある程度こういう内容に駆逐・更新されていくんだなあという感想。つまり、日本全国の教職課程の「教育の方法と技術」の現状は、本書を批判できるレベルにはないと思われる。故に、本書が(1単位分だけであっても)それなりにあちこちでテキストとして使われるようになるのだろう。
しかし、「理論」と呼ばれるものが固定的なgivenで、単なる適用あるいは無関係なものとしてhowがその後に語られている印象は否めない。教育工学が悪いってことじゃないんだけど、もっと教育方法学に軸足を置いた、whyがたくさん引き出されるような(もう少し少人数で書かれた)本があるといいと思う。今後のそういう成熟に期待。
それにしても、サブタイトルの「DX時代」というのは誰か「待て」と思わなかったのか。時代なのかよって。
watari
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