[授業後030] 模擬授業の生徒役割カード
中京大学国際学部は、言語文化学科の学生が中学校・高等学校教諭一種免許状(英語)を取得できる。英語学・英語教育専修の学生は2年次秋に専修専門科目を兼ねる最初の英語科教育法Ⅱ (4単位)を履修し、3年次春に英語科教育法Ⅰ (4単位)を履修することになっているが、それ以外の専修の学生は(2年次秋はそれぞれの専修専門科目があるので)3年次春以降に英語科教育法Ⅰ (4単位)を履修し、3年次秋以降に英語科教育法Ⅱ (4単位)を履修するという、面白いカリキュラム編成になっている。春と秋で異なる学生集団が混ざる(春は3年生以上、秋は2、3年生以上)というわけだ。さらに学部専門科目として、教職課程を履修していない学生や国際学科の3年生以上も履修可能である。
こういう事情があるので必ずしももう一方の科目の修得を前提としない作りにしているが、もう一つ、これは学部全体に共通の特徴として、週1回2単位の科目と週2回4単位の科目が存在する。英語科教育法はいずれも後者で、英語科教育法Ⅱは月曜・木曜、英語科教育法Ⅰは火曜・木曜に開講されている。この火曜・木曜30回をフルに生かすべく、英語科教育法Ⅰは中心を模擬授業・協議会サイクルに置いている。火曜に教科書検討を15分間で教科書の指定箇所の検討をグループで行ない、構想した15分の模擬授業を2グループで実施する。各自が気づいた課題の改善案を木曜に持ち寄って、20分の間に準備を行い、再度15分の模擬授業を今度は全体で(1つないしは2つ)実施し、残りの20分程度で2グループに分かれて対話型模擬授業検討会を行うというサイクルである。
この模擬授業について今期、工夫を図ったことがある。静岡大学時代から思っていたことではあるが、特に昨年度秋の英語科教育法Ⅱの模擬授業を観ていて、生徒役には何らかの働きかけが必要だと感じていた。教科教育法担当者はよく実感していることと思うが、模擬授業の成否(つつがなく終えられるかどうかという意味ではなく、授業者や履修者全体にとって得るものが多い授業となるかどうか)は児童・生徒役にかかっていると言っても言い過ぎではない。「デキる/ない」や「トクイ/ニガテ」という言葉ではそれぞれにイメージも異なり、「ニガテな生徒はそんなに簡単に納得しないよ」と言っても、実際に当てられるとすぐに先生役の求める答えや都合のいい発言・パフォーマンスを提供してしまう。
そこで27パターンの生徒役割カードを作成した(上記リンクからダウンロードできる)。(1)知識・技能、(2) 活動、(3) 態度の3観点で、3種類ずつ27パターン。現行学習指導要領の学力の3観点に概ね対応しているが、それよりは英語の模擬授業で考えたいポイントとの対応と、教室に存在する生徒の多様性の解像度を考慮して作成した。まだ数回だが(木曜だけのつもりだったが、学生に好評だったので毎回使っている)、模擬授業に参加しやすくなったようで、こういう生徒だったらどう振る舞うかを考えさせることにも貢献しているとのこと。これについてはいずれどこかで実践報告してもいいかもと思っている。
教科や授業環境に併せて自由に改変していただいて構わないので、もし利用していただけるのであれば、学生の反応や、自身の手応え・課題をお知らせいただけると嬉しい。
なお私はラベルシールに印刷し、白紙のトランプに貼って、毎回履修者がトランプのカードを引いて役割を決められるようにして使っている。