[授業後031] 模擬授業の省察を深める文献
英語科教育法の実践(途中の)報告。
前記事で言及した春学期の英語科教育法Ⅰは、教材研究の上でやってみて、改善案を持ち寄ってやってみて事後検討会というサイクルなので、前もって文献を読んできて、という課題の出し方はあまり相性が良くない。授業のアイデアを事前に狭めたくはないし、読めばなるべくその通りにこなそうとしてしまうだろうからだ。
火曜から木曜は授業の改善案を考えるのが(授業冒頭にSmall Talkのコーナーも設けているが、その担当者以外は)唯一にして最大の課題だし、文献を読むという課題の重さから言っても、課すとすれば必然的に木曜から翌週の火曜に向けてのタイミングとなる。自ずと、復習的に、その週の模擬授業や事後検討会で課題として残ったことを深めてもらうことを意図した文献を渡して、火曜の冒頭に軽く感想を共有してまとめるスタイルに至ったのだが、週ごとに提出してもらっているリフレクションをピックアップして振り返る時間との接続で、これが個人的には結構良い。
形としては検定教科書ベースで順に進めているが、毎週の模擬授業にはテーマを設定している。初回は(1)パートの「導入」(と既出の復習)。次は(2)内容理解と音読。その次は(3)ペア・グループ活動で、前回は(4)新出文法事項の解説という具合。どう料理し、どこに課題を見出すかは任せているが、いずれにしてもそれが肝となるところを選んでいるつもりである。リレー単元だとどういう点に目を向けるかは出てきた指導案次第となるが、彼女らに技術を磨いて欲しかったり、これまでの授業観を脱構築してアップデートして欲しかったりするところをある程度狙えるのでなかなかよいと感じている。回数が少ないと「いろいろやったけど…」と発散的になってしまうおそれもあるが、週2回4単位という特性を活かして、各学年の授業で同じテーマを重ねていけるのでその点もカバーできる。
木曜の全体での模擬授業の後は、
- 渡辺 貴裕・岩瀬 直樹 (2017).「より深い省察の促進を目指す対話型模擬授業検討会を軸とした教師教育の取り組み」『日本教師教育学会年報』26, 136−146. doi: 10.32292/jsste.26.0_136
- 渡辺 貴裕 (2019).『小学校の模擬授業とリフレクションで学ぶ 授業づくりの考え方』くろしお出版.
を参考に2グループに分けて対話型検討会を行ない、最後に議論を共有している。最初の週の前に上記の文献を事前に読むことはあえて求めず、模擬授業のサイクルと同様、ぶっつけでやってみて、その経験を踏まえて渡辺(2019)のミニレクチャー⑥(pp. 130−136)を読んできてもらった(ただ、司会を務めたのがゼミ生だったということもあるが、検討会は初めてとは思えないほどスムーズで、私もビックリした。この日は客員教授の大津由紀雄先生がたまたまゲスト参加してくれたのだが、授業後に先生曰く、「言わされてるんじゃなくて、言いたくて次々発言してるって感じがいいねえ」とのこと)。
翌週は(2)について
- 一般財団法人語学教育研究所(編)(2021).『英語授業の「型」づくり: おさえておきたい指導の基本』大修館書店. pp. 23-24, 80-82, 94-103.
で音読指導について振り返ってもらい、さらに翌週は(3)について
- 三浦孝 (2014).『英語授業への人間形成的アプローチ: 結び育てるコミュニケーションを教室に』研究社. pp. 151-166.
でコミュニケーション活動について振り返ってもらった。前回(4)については、2年生の最後で現在完了がターゲットとなったので、
- 太田 洋 (2016).『新装改訂 英語の授業が変わる50のポイント』光村図書. pp. 86−95.
- 加賀 信広・大橋 一人(編) (2017).『授業力アップのための一歩進んだ英文法』開拓社. pp. 80−83.
- 伊藤 笏康 (2014).『逆転の英文法: ネイティブの発想を解きあかす』NHK出版. pp. 172−217.
の内、自分に必要だと思うものを読むこととした。もともと太田 (2016)と加賀・大橋 (2017)は参考文献としてシラバスに掲載している(テキストは中学校の検定教科書New Crown English Seriesのみな)のだが、そこから意識的にピックアップして取り上げた次第。
授業を作る上で汎用性を考えているわけではなく、これらは現在この科目を履修する学生たちのための選定で、履修者が変われば課題として課す文献も変わる可能性は大いにあるが、いつかこういうセレクトをベースに英語教員養成・研修用の授業づくりリーディングズを編んでみたい気はする。