レビュー
[雑感109][本097] 木村『異言語間コミュニケーションの方法』
先日開催された学部イベントの前後にこういう文献を読む機会があると良いなと思う。
- 木村護郎クリストフ (2021).『異言語間コミュニケーションの方法: 媒介言語をめぐる議論と実際』大修館書店.
より一般的に言えば、単発のイベントを仕掛けることに私自身はもう若干飽きていて、イベントとイベント、そしてその間に過ごす時間がつながって、互いが互いの触媒となるような企画がいいと考えている。
もちろん現状は、単発のイベントでも十分魅力的で得難い時間が実現できており、学生にも喜ばれている。上記のイベントも、単に講演会とするのではなく、その前に学生同士のワークショップを用意して、講演会により能動的に参加できるよう工夫はしている。しかし、投げかけられた問いや、自分の中でぐるぐるしている思考をさらに深める機会の提供を私としては模索し、充実させたい。
“All in English”至上主義(あるいは「英語のみ」を見せつけたり他者に要求したりしたい英語コンプレックス)はまだまだ英語教育業界の中心を占めているが、仮にその中和剤であっても「母語の効用」などを声高に叫ぶのは野暮ったいし、抽象的である限り響かない。本書で整理されている「言語的媒介の諸方略」のそれぞれを具体的に語ることが必要だろう。
上記のイベントで、英語のみ(を学ぶこと)を擁護する立場に立つことになった学生から「英語が話せるとカッコいい」という意見が出た。それは一蹴されたが(学生自身も「これは主観になってしまうので」と留保をつけた上で提示したのだが)、では一方で複言語を擁護する立場の者が「複言語的な言語使用(あるいは考え方)ができるとカッコいい」と言っていたらどうだったのかを考える。そして、少なくない前者の素朴な憧れに寄りかかって授業をする小中高の現状を考える。
watari
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