レビュー
[本120] 山岡・田頭(編)『英語授業デザインマニュアル』

[本120] 山岡・田頭(編)『英語授業デザインマニュアル』

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第1章が白眉で、非常に良い。それ以降は現状の英語教育界隈に広まっている定型的な議論へと収斂していく印象ではあるが、全体を通じてコンパクトに目配りの効いた文献と言える。教職課程の授業や研修の参考書に広く薦めることができる。

編著者の視点で感心したのは、これだけ多くの執筆者が名を連ねているのに全体のバランスが崩れておらず、前半は章節間のつながりもあること。編者の苦労が勝手に拝察される。一方で、第10章の評価論は抽象的な記述にとどまっているので、前半で引いた例を持ち出してきて具体例とすればよかったのになどと思いながら読んだ。

もう一つ、教職課程の授業や研修のテキストとする際は、各節末尾のまとめを読者自身が書く方が良い。長い文章を読む時間も心の余裕もなく「コスパ」が重視される時代性は理解しつつも、そういう風にまとめちゃったら本書の味わいが損なわれちゃわない?と思うのは、難しいことを難しく語りたがる大学キョージュの証拠か。

ともあれ、技能の指導に関しては語研ぽい部分もあるが、それ以外の随所に広大英語教育の独自性を感じる。無批判に受容するか批判的に摂取するかは読み手の問題なので、自分の見解と食い違う部分が色々あっても、こういう文献が増えて授業論が成熟していくのは大いに歓迎。

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