レビュー
[本122] 園田『教示の不在』
- 園田浩司 (2021).『教示の不在: カメルーン狩猟採集社会における「教えない教育」』明石書店.
フィールドのデータや観察は興味深く、それなりにおもしろく読んだが、対比されているところの「教え-教えられる関係性」というのがあまりにも単純というか平板で、いまさらレイヴ&ウェンガーを持ち出してきてまとめちゃうのは勿体なくないか、と思った。
第6章で記述されている近隣の制度的学校の現状からすれば、そういう枠づけになるのは自然とも言えるが。終章のまとめに納得する部分もあるものの、本書で前提とされている固定的教育(あるいは「教える」)観とタイトルに最後まで違和感が残る。
制度的学校教育の中でも、ここで言う「教え-教えられる関係性」を相対化するような瞬間は授業のあちこちにあるよ、とか、本書で言うところの「教示的無関心」のようなオルタナティブの瞬間を模索している先生もいたりするよ、という話を普段から見聞きしているせいかな。
watari
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