レビュー
[本141] 村田『優しいコミュニケーション』

[本141] 村田『優しいコミュニケーション』

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これまでは勿論、ここ数年だけでみても村田先生の仕事ぶりにはただただ敬服するばかりだけど、そのダイジェストが比較的読みやすくまとめられている印象。新書に、専門的な記号付きの会話のスクリプトが載せられているのが新鮮。

考察の対象は、ビジネスミーティングや、地域住民活動のファシリテーター、政治家の記者会見と多岐に渡るが、特に3章までの内容は外国語教育にとっても参考にすべき点が多いと思う。

評価やタブレット端末活用に腐心する現状において「やり取り」の指導に先生方の意識が向いているかどうかは心許ないところではあるが、「やり取り」の指導とって必要なのは、数十年変わり映えのしない(場面・機能別の)フレーズブックではなく、本書のような文献だろう。

本書を通じて再認識したのは、言語教育にとって社会言語学や語用論の研究成果を参照する余地はまだまだあるということであり、学習指導要領において「やり取り」を「話すこと」の下に位置づけたのは圧倒的に間違いだったということである。「教師の英語力ガー」という声はいつも喧しいが、実際どういうことばが、あるいは生徒とのインタラクションが教師に求められるかということが具体的に示されることは少ない。いわゆるteacher talkについて考えるヒントも本書に多くあると思う。

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