レビュー
[レビュー077] 神代・後藤・横井『これからの教育学』

[レビュー077] 神代・後藤・横井『これからの教育学』

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いただきもの。こんな教育学(概説)のテキスト、とっても素敵で、本当に「これからの」やんという感じ。四半世紀前に本書を通じて教育学を学んでいたら、どうなっていただろうか。レビューと言えるほどではないが、読後の所感を記すと、

(1) コンパクトな記述に即して「文献にチャレンジ」に挙げられた文献の的確さ。著者たちの造詣の深さに起因するのだろうが、最新のものまで含めて、ハズレのない選りすぐりの文献が並ぶ。これを追っかけて読んでいくだけで良い教育学者が育ちそう。

(2) 構成の巧みさ。章の扉のQuizで初学者の関心を引き、節内の問いで深く考えさせる。冒頭で関連する章を図解し、章をまたぐクロスリファレンスや言及も豊富。教育学の授業の担当者が全ての領域に研究レベルで詳しいことも稀だろうが、本書を通じて参考文献に当たっていけば良い授業ができるだろう。

(3) コンパクトながら重要な人物や概念、史実が網羅されている。その柔らかくも大事なところを逃さない語りに感心しきり。資料も豊富で、特に学校と社会の歴史の第2部がアツい。細切れの教採対策本で勉強するぐらいなら、授業のテキストでなくとも本書を読んだほうが良い。

(4) ただし、Further Readingsの文献の難易度はまちまちでキュレーションが必要。細かい所で、言語教育の立場から言えば、第13章の「翻訳アプリを使えば、言語の壁を超えた協働も可能です」(p. 219)というのは単純化し過ぎというか、言葉足らずだなと思うけども。

とにかくいい仕事!

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