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[本161] 大関・漆原(編)『分散形態論の新展開』

[本161] 大関・漆原(編)『分散形態論の新展開』

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取り急ぎMarantzせんせと大関さんによる第Ⅰ部の2章と、木村博子・成田広樹「語と句の相違からみる省略・削除の再考」を読んだが、特に後者がめちゃんこ面白かった。

まず「誰好み…?」と「誰の好み…?」という疑問文とそれに対する応答(の許容可能性)という現象が面白く、分析が端的で鮮やか(順を追って読んでいけば私でもすっきり理解できる)。ただ、そういう現象の記述的一般化にとどまるのであれば、若かりし頃にこういうのそれなりに拝読したなあ(今はその向学心も衰えちまったかもだぜ…)で終わるのだが、それが分散形態論の後期挿入仮説とリンクして説明的妥当性に貢献しているのが素晴らしい。その前に理論的基盤の2章があったおかげでこの分析の理解が深まったので、本全体の構成も良いと言える。

このタイプの複合語疑問文だと、「誰/何キッカケ」というのが初めに浮かんだのだが、「誰好み」は連濁までが絡んで、それも含めて語形成の統語-形態音韻インターフェイスのおもしろポイントなのだった。素人ながら、「誰好み」と「誰の好み」は属格で意味的等価性が表現されるが、「誰/何キッカケ」は「誰/何がキッカケ」となって、格の違いは何か影響あるのかしらと、読後も「誰/どこ発信」、「誰/何目当て」といった例やそれぞれの違いをワクワク考えているから、相当面白い論文だということがわかる。

※成田さんのvoicy「ヒトがつくることば⇄ことばがつくるヒトで取り上げていただきました。

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