レビュー
[本164] 恒吉・藤村『国際的に見る教育のイノベーション』
- 恒吉 僚子・藤村 宣之(2023).『国際的に見る教育のイノベーション: 日本の学校の未来を俯瞰する』勁草書房.
各教科の授業やカリキュラムを論じる立場からすれば比較は大味と言えば大味だが、比較教育の強みで全体像を俯瞰的に大づかみで教えてくれる。先生方や英語教育関係者も読んでおいて損はしない。
私の専門性からは、日本の学校教育や授業に対するある種の鵺的なスタンスが興味深い。恒吉先生の専門は社会学でもあるが、教育社会学者ほど学校教育や授業に対してニュートラルにドライな見方をしているわけでもなく、藤村先生も教育心理学と教科教育の交わるところで、教育工学的な手続き・技術論に落とし込むわけではなく。色々な学校や先生に結構関わっているんだけど、よく言えば埋没はしておらず、悪く言えば数歩引いたところにいるというか。他方、それぞれのフィールドから非定型・再構築型教育、あるいはこれまでに「輸出」してきたLesson StudyやTokkatsuをポジティブに捉える価値判断はそれなりに明示されているが、かといって授業論に深く踏み込んでその綾や課題を分析しているかと言えばそうでもない。教育方法学者(の大半)はこういう書き方はしないだろうなと思いながら読んだ。
watari
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