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[レビュー083] 奈須・岡村(編)『転移する学力』

[レビュー083] 奈須・岡村(編)『転移する学力』

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近い時期に刊行された『個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を目指して』は正面から取り上げる気にならなかったが、こちらは実践に即した良書。「転移」という言葉が必要・適切かということはあるが、研究指定校の報告として出色の出来の部類と言って良いと思う。

創出・受容・転移という枠組みが導入され、第2章で各教科の「見方・考え方」を育もうとする実践が報告されていて、つまるところ丁寧な教育内容研究に基づく良質の授業研究だよね、と思いながら読み、各教科の取り組みがどうつながり(水平軸)、1年生から6年生まででどういうカリキュラム(垂直軸)が展望されているかが問われるかなと思っていると、第3章で「創る科」が導入され、そこでの汎用的認知スキル、いわゆる教科をまたいだコンピテンシー的視点での実践報告が第4章で紹介されている。

最も感心したのは、その視点が再び各教科に戻されていることで、各教科の先生方が創出・受容・転移の枠組みと「創る科」という舞台でコンピテンシー・ベースの授業づくりに試行錯誤して、それぞれの教科観を深めたことが伝わってくる。素直に良い先生たちだな〜という感じ。

いま一部で議論喧しい附属学校ならではの取り組みでもある。それは「勉強できる子どもたちの集まり」という意味ではなくて、未来を投射して、教育観・授業観を深める研究に時間と熱意を注げる教員が集まって、中長期の教育実践を重ねていくことができる体制という意味で。附属学校を十把一絡げに批判する人たちに、本書の取り組みと報告されている子どもたちの様子を読み聞かせしてあげてはどうだろうか。

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