レビュー
[レビュー084] 郡山・宮木『意思決定理論とEBPM』

[レビュー084] 郡山・宮木『意思決定理論とEBPM』

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残念ながら期待したほどの内容ではなかった。医学と経済学を専門とする高校の同級生の共著というストーリーはそこそこエモいが、読者にはそれほど関係のないエリート話に過ぎず、社会的意思決定の難しさを解説した後半は多少インフォーマティブだったが、全体としては、すでに中室・津川『「原因と結果」の経済学』やパール&マッケンジー『因果推論の科学』がある中では…という感じ。なんなら『英語教育のエビデンス』を読んでおいてくれれば、こうはならなかったかなと思ったぐらい。

強いて言えば、エビデンスベース全肯定のテンションで、われわれが煩瑣だとあえて細かくは語らなかったEBMの経緯や、What Works Centreの話を詳しく情報示して述べているので、副読本的な存在にはなるか。

まあ本書をそれほどでもないと思う理由には、ジョン・スノウの話は『因果推論の科学』等に詳しかったり、森林太郎(鷗外)の脚気の話も、著者が紹介する吉村昭『白い航跡』とは別に、板倉聖宣さんの文献で前からよく知っていたりと、私が事前知識を持ち過ぎということがある。でも、EBPMについてこれから勉強したい!という人に薦める文献ではないな。。。そしていくつか読んだ人なら本書では物足りないだろう。

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