レビュー
[本172] マッカスキル『見えない未来を変える「いま」』
- ウィリアム・マッカスキル(千葉敏生(訳))(2024).『見えない未来を変える「いま」: 〈長期主義〉倫理学のフレームワーク』みすず書房.
公教育の一環としての言語教育あるいは外国語教育は、「見えない未来を変える『いま』」足り得ているか、足り得るかということを考えた。「重大性、持続性、偶発性」(SPC)のフレームワークは、学校や自治体レベルのカリキュラム改革を考える上でも役に立つことがあるかもしれない。
あちこちの思考実験の抽象度に戸惑うかもしれないが、奴隷解放に至る議論などは明快だし、全体として論旨は複雑ではない。「持続可能性の概念は、経済成長を鈍化させることと結びつけられることが多い。しかし、一定のレベルの技術進歩が持続可能でないなら、それは選択肢にならない。私たちは、巨大な落下のリスクを抱えながら、ロープやハーネスなしで崖を登っているクライマーのようなものなのかもしれない」(p. 134)というメタファーはなんとも示唆的だと感じた。
watari
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