レビュー
[レビュ−089] 遠藤・筒井『まなぶことの歩みと成り立ち』
- 遠藤野ゆり・筒井美紀 (2023).『まなぶことの歩みと成り立ち: 公教育の原理的探究』法政大学出版局.
教職課程の「教育原理」やそれに類する科目が全然面白くなかった、あるいは全く記憶にない全ての学生・先生に送りたい。院生時代の私自身に同科目の担当経験があるから余計にガツンと響く。
特に序章の熱さ。ここだけでも熟読の価値がある(教育実習の事前指導の参考文献にすることを決めた)。教育原理を学ぶ目的・目標の曖昧さを喝破し、「『教えるとはどういうことか』を熱意や情緒の次元で捉え」(p. 2)る勘違いに注意を促すだけでなく、教育実習成績報告表から何が求められているということが読み取れて、何を考えなければいけないのかをロジカルに端的に説く。「教育原理」を、「自分の経験の範囲内でつくりあげてきた特定の価値観や思い込み」(p. 2)を相対化できる科目だと捉えている者・そう捉えて学んできた者がいま全国にどのくらいいるだろうか?!
他にも、「実際のところ、教育の歴史はそんなふうに進んではこなかったし、これからもそんなふうに進んでいかないだろう。なぜならくり返せば、人間の社会はさまざまな人びと同士の、葛藤と妥協の世界に他ならないからだ」(p. 63)といった記述にシビれる憧れる。
憧れたっぷりに教職課程を学び始めた大学1、2年生に、ある面で身も蓋もないこうしたことばを受け止めてもらえるかどうかは分からないが、それでも年に数人はバチィッとヒットする学生がいるものだ。たぶん私が学生だったら間違いなくそう。英語教育にいて、学生たちからこの辺の教職科目について肯定的なコメントを聞くことは本当に少ないのをずっと悲しく思ってきたが、久々に「教育原理」を担当したくなった。
watari
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