メッセージ
[本177] 梅野・林(編)『教師のための授業実践学』
- 梅野 圭史・林 修(編)(2024).『教師のための授業実践学: 学ぶ力を鍛える創造的授業の探究』ミネルヴァ書房.
評価が難しく、対象とする読者の範囲は限られると思うのだが、教育方法学者とは本書の評価をめぐってぜひ議論したいと思った一冊。
私が学生の頃の北大流の言い方で言えば「体育方法学からの挑戦状」という感じで、ところどころで体育科を中心に事例を挟みつつ、第Ⅰ部では「先達の実践知」という視点から12章、第Ⅱ部は「今日の実践課題」を9章に分けて取り上げている。
ノールの教育的関係論やモレンハウアーの議論を基調に、国内外の、最近の教育方法学・教育原理のテキストでは取り上げられないかもと思うような古い文献から比較的最近の心理学・社会学の文献までを参照しつつ、「授業の場の力の関係性」や教授戦略・学習方略を論じる第Ⅰ部が個人的には新鮮で、教職大学院で授業でも持っていれば、石井さんの『授業づくりの深め方』(これもミネルヴァ書房、2020年)と照らし合わせながら検討したら面白いかもと思って読んだ。加えて、体育科中心の話の中に、外国語学習の方略研究ではお馴染みのRubin (1975)、Oxford (1990)やO’Malley and Chamot (1990)、Cohen (1998)といった文献が登場し、なんなら英語科教育法のテキストなどより丁寧に解説されていたのも面白かった。
ただ、章による文体・内容のバラつきには目を瞑るとしても、第Ⅱ部は大味というか、言うほど第Ⅰ部の「実践知」が活かされているようにも思えず、批判性も弱くて残念だった。そう思うのは私が批判性を求めすぎだからで、この手の教職科目の文献としては出色と評価すべきだろうか(学部生にはちょっと抽象度が高すぎると思うが…)。ということで教育方法学の人たちの評価を聞きたいと思った次第。
watari
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