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[雑感142] やり取りのreciprocality

[雑感142] やり取りのreciprocality

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某市で中学校1年の授業。今年、初めてコキンちゃんという存在を知った。授業とはあまり関係のない流れだが、たまたま観察していた1年生の2人がコキンちゃん派だと言っていて、「コキンちゃんのどういうところが好き?」と私が(英語で)訊くと、ユニゾンで“It’s cute!”と返してくれる明るいクラス。私がさらに「ドキンちゃんと見た目一緒じゃないの?コキンちゃんは何が特別?」とさらに(英語で)訊いたら「確かに、なんでだろう。あ、the color, I like!」とのこと。

こういうあらわれからすれば、Q-Aの活動で、質問の表現だけでなく回答もプリントを見て(1人の生徒はYes, I do.に線が引いてあったりして、それを見て)言い合っている姿はもったいなく思える。先生が目指していることからすれば、「これこれの表現を使う」ではなく、伝達意図をベースに「こういうことを訊く」という形で、追い質問も志向しながら取り組めるといいですね、と確認した。

翌々日、同じ県の別の中学校。昼を挟んで1年生と3年生の授業を見学。夕方までたっぷり協議。1年生はwhoseがターゲットで、学校内で撮影した写真を見せながら誰のかを訊くやり取りを繰り返した。1人を追っていると、“It is Akane’s.”が“Akane’s”になったり“Akane.”になったり、“It is Akane.”になったりと安定しなくて興味深い。ただ、どちらかと言えばIt isを抜かして名前だけで伝えがちであった彼女が、ALTとやり取りした時には“It is Akane’s.”と整った言い方を選択したことや、同じ写真でも相手によって出す情報を変えたりしている様子に中学生の微妙な心理を垣間見た。

3年生も同様で、アフガニスタンにランドセルを送る話について(Megのセリフの続きという形で、生徒たちは結局は自分のことを話していたのだが)何をdonateするかを伝え合った際、追跡して見ていた男子生徒も相手によって言う内容を変えていた。彼自身はmy old toysを用意していたが、相手が stationeryと言うと自分も stationeryだと言い、そこにand my old toysと足した。相手がold board gameと言うとI’ll donate old board game and my old toys.と言うので、面白いなあと思って見守っていた。

Toysについてはトミカやレゴブロックという具体例も用意していたのだが、その具体例を出さないこともあり、しまいにはALTとやり取りする際にtoysすら出さずmy old clothesに変えてしまった。最後のターンで活動に混ざったゼミ生とやりとりした際に、彼女が“I would donate my old toys.”と言ったのに対して“I’ll donate my old toys, too.”と言ってトミカやレゴにまで言及した際に「ああ、なるほど」と思った。

彼は相手との関係性や相手の反応にとても敏感で、反応が芳しくなければそこには踏み込まないという選択をしていたのではないか。だからゼミ生が先にtoysを出してくれたやり取りでは安心して、“too”をつけてmy old toysを持ち出すことができた。加えてゼミ生は彼の一言一言に頷いてリアクションをくれたので、彼としてもトミカやレゴのことを話しても大丈夫だと思えたのではないか。なぜなら彼自身が、全てのやり取りで“Nice idea.”とか“That’s good.”とリアクションを欠かさない人であったから。

やり取りを踏まえて文章を書いている際、私に向かってはにかみながら“When I was a child, I ate TOMICA.”と教えてくれた。私がブッダなら「人間の心の中にこそ神が宿っている」と悟りを開いたかもしれない。偉大なりトミカ。

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