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[本107] 和泉『悪い言語哲学入門』

[本107] 和泉『悪い言語哲学入門』

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移動中の読書。言語哲学の入門書となるとこうならざるを得ないのかもしれないが、私にとっては池上嘉彦先生の意味論の文献や、本書でも引用されている伝統的な範囲の語用論の文献で何度も触れてきた話が主で、それほど目新しい話はなく、面白く読めたのは「〇〇め!」の話と第7章の総称文のところぐらいだった。エヴァや『ラッキーマン』といった特定の作品への馴染みに依存した例もあまり好きではない。

上記の、私が触れてきたような文献を読んでいない世代の、ちょっと歯応えのある入門書にはいいのかもしれないが、本書の文体や説明スタイルを面白がれる読者なら、言語哲学や語用論の専門書に直接当たっても大丈夫ではないかという気がする(その点で巻末のリストはそれなりに有用かもしれないが…)。語用論と重なる部分については、『新しい語用論の世界』で紹介されているような最近の展開にもう少し本文で触れられているとよかったと思う。

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