[文法レビュー003] Complements (3)
ずいぶん間の空いてしまった補部(Complements)についての勉強、の続き、の続き。
- Huddleston, R., & Pullum, G. (Eds.), (2002). The Cambridge grammar of the English language. Cambridge University Press.
のpp. 220-228は、補部と修飾語句(adjuncts)との統語論的・意味論的違いについて。
機能的な意味での補部をどの程度含めるべきかに関しては不確かなところもあり、研究者の間でも不一致が見られるものの、中核的な補部は一般に修飾語句とははっきりと区別される。ここでは、統語的な違いに関わることとして(a) 認可、(b) 義務性、(c) 照応、(d) 範疇、(e) 位置が、意味論的な問題として(f) 項らしさ、(g) 選択(制約)、(h) 役割を挙げている。
(a) 認可(licensing)
節構造内の補部の最も重要な特性は、それを認可する適切な動詞の存在が必要だということである。例えば次のmentionは目的語(O)を認めるが、alludeは認めない。thinkはO + 述部補語(PC)を認めるが、sayは認めない。それとは対照的にfor this reason、at that time、howeverといった修飾語句は、特定の動詞との生起に限られない。
- She mentioned the letter.
- *She alluded the letter.
- She thought him unreliable.
- *She said him unreliable.
逆に言うと、動詞は取り得る補部によって、「自動詞」(intransitive)や「一項他動詞」(monotrantisive)といった名称で下位範疇化される。ただし、このような、たくさんの動詞を束ねる確立された名称を持つものはごく僅かで、例えばinquireや wonderのように補部に疑問節を取るタイプの動詞に対する名称はないことに注意しよう。
- He inquired/*believed/*wanted whether it was ready.
さらに、例えばthinkが複合他動詞に限られるものではないように、大半の動詞は補部に関して2つ以上のパターンを認める。
- Let me think for a moment.
- She was obviously thinking uncharitable thoughts.
- I was thinking of someone else.
- She thought that he was unreliable.
補部の認可は、統語的に認められる句や節のタイプの決定を伴う。ここでは前置詞の選択と従属節構造の選択が取り上げられている。
非中核的補部の役割を果たす前置詞句は、動詞によって指定された前置詞を持つことがよくある。
- It consists of egg and milk. / He didn’t look at her. / It depends on the cost.
- He gave it to Pat. / He supplied them with sufficient food. / I blame it on Kim.
ここでの前置詞を置き換えると、文法的でなくなる(*It consists with sugar and water)か、全く異なる意味になる(He didn’t look at them.をHe didn’t look for them.の意味の違いは、atとforの違いだけでは説明できない)。つまり、前置詞の選択の余地はないということだ。2つ目の例は別の補部(O)が挟まって動詞から離れているが、いずれの前置詞句も、認可基準によって補部としての資格が与えられているとみなすことができる(対照的に、He threw it to/towards/past Pat.やHe set out with/without sufficient food.は前置詞に選択の余地がある)。
いわゆる「7文型」が言われるのもこのことによるわけで、「イディオム」として1つ目の例ばかり見ていると、2つ目が見過ごされそうだ。このことは「意味順」指導法においても解決が必要となる問題だ(1つ目については前置詞まで含めて「する」に入れているが、特に2つ目ような例で「だれ・なに」の場合、それ以降のボックスにおいてどう整合的な扱いをするかが問われる)。
節が補部の役割を果たす場合も、より上位の節構造にある動詞が、認められる従属節の構造(平叙・疑問・感嘆や、定形節・不定詞・動名詞等)を決定する。Dependは平叙節ではなく疑問節をとり、tendは動名詞や定形節ではなく不定詞を取る。いつでも疑問節や不定詞が認められるわけではなく、(特に4つ目は中学生にもなじみのある)下2つの例で明らかな通り、適切な動詞が必要なのだ。
- Whether we go abroad/*That we go abroad depends on the cost.
- He tends to be lazy/*being lazy/*that he is lazy.
- *Whether he wins counts on the weather.
- *He enjoys to be lazy.
前置詞句と同様、節も補部にも修飾語句にもなり得る。
- He doesn’t know whether or not she likes him.
- I’m inviting him, whether or not she likes him.
上は動詞knowが要求する補部で「〈彼のことを彼女は好きかそうでないか〉という問いに対する答えを彼は知らない」という意味だが、下はそうした制限のない修飾語句で「彼女が彼のことを好きかどうかは問題ではなく、ともかく私は彼を招待している」という意味である。
コンパクトにまとめようと思うのだが、例がないとまとめにならないし、例を引いて解説を加えるとどうしても長くなってしまう。ということで、続く。
I’m grammarin’.